年金分割とはどのような制度でしょうか?

離婚を考えている夫婦において、特に夫婦の一方の側の年金は金銭的にも重要な問題です。
以前から、専業主婦が離婚した場合の年金水準の低さが問題とされていましたが、平成16年に法律が改正され、離婚後に夫婦の一方の年金の一部を分割してもらえることになりました。この制度のことを年金分割といいます。
さらに平成19年以降、「合意分割制度」「3号(または強制)分割制度」という新たな制度が始まっています。

①年金分割とは

年金分割とは、結婚している期間に支払った保険料は、夫婦が共同で納めたものとみなして、将来の年金額を計算するという制度のことを言います。専業主婦の場合は、夫が払った保険料の一部について、最大50パーセントまでを妻が払ったものとして、将来の年金額が計算されることになり、共稼ぎの場合は、足して案分したものまでということになります。
但し、年金分割で分割される「年金」とは、実際に受取る年金額ではなく、社会保険事務所が保険料や保険給付を算定する際に用いる標準報酬のことをいいます。このため、年金分割されるといっても、夫が老後に受取る年金を、妻が分けてもらえるわけではありません。
この結果、年金分割をしても、離婚後すぐに年金が受け取ることができるのではなく、妻が年金を受給できる年齢になり、且つ妻が年金の受給資格期間(加入期間)を満たしているときに、初めて妻の本来の年金に、夫の年金分が上乗せして支給されることになるのです。

②年金分割の種類

a)合意分割制度

平成19年4月以降に離婚した場合で、婚姻期間中の厚生年金、共済年金の標準報酬を、夫婦の合意や裁判手続きによって、最大50パーセントまで分割できる制度を言います。夫婦の話合いがまとまらず、合意に達することができない場合は、家庭裁判所で調停や審判、離婚訴訟の中で行う場合は訴訟を行い、その中で決めることになります。特別な事情がない限り、審判や判決でも、年金分割の割合は50パーセントと判断されています。

b)3号分割制度(強制分割制度)

平成20年4月以降に離婚した、専業主婦(妻が国民年金の第3号被保険者)がいる夫婦が対象となる年金分割の制度を言います。離婚成立後に、妻が社会保険事務所に請求をすれば、夫と話し合いや合意を経なくても、自動的に平成20年4月以降の夫の標準報酬の50パーセントが分割されるという、強制的な効力を持つ分割制度です。
但し、このような強制分割ができるのは、平成20年4月以降の婚姻期間についてだけなので、それより前の婚姻期間中の年金の分割方法については、「合意分割」によることとなります。

③年金分割できる年金

年金分割の対象になるのは、夫婦が結婚していた間に納めていた、被用者年金と呼ばれる部分(厚生年金と共済年金)に限られます。国民年金や企業年金、共済年金の職域部分などは年金分割の対象になりません。
ですから、離婚する夫婦が、双方自営業であった場合等、婚姻期間中に国民年金にしか加入していなかったような場合は、残念ながら年金分割の制度を利用することはできません。

④年金分割の性質

年金分割によって得た年金は、受取人しか利用できない、受取人だけの財産ということになります。こういった性質の権利のことを「一身専属」の財産といいます。
したがって、たとえば、夫婦が離婚をし、更に年金分割をした後で元夫が死亡した場合や、妻側が他の男性と再婚をした場合であっても、一度年金分割をした以上、元妻として、一生年金分割によって得た年金を受取ることができます。
しかし、元夫が先に亡くなった場合については、妻でない以上、遺族年金をもらうことはできないので注意して下さい。

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